「……で」
「で、って言われましても、ねぇ」
「なんでこんなとこで野宿してるんだろね? あたし達は」
ぱち、と焚き火がはぜる音がする。
夜闇の藍色に染まった深い森の中。
小さく開けた場所は、炎の朱色に染まっていた。
乾いた音を立てて枝を折る少女は、大きく溜息をもらす。
「というかさ。あの村はなんなのよ」
少女の名は、ステラ。
肩ほどまでの栗色の髪を大雑把にうなじのあたりで結び、鳶色の瞳は焚き火を見つめている。
鎧らしい鎧は身につけていないが、腰に長剣を佩いていた。
しかしその柄に巻かれた皮はところどころ擦り切れており、長く使われてきた物だという事が容易に想像できる。
「食事中に、いきなり襲われましたものねぇ」
ステラの折った枝が炎に投げ込まれるのを見ていたもう一人の少女が、おっとりとした口調で言った。
こちらの少女はリーラ。
ゆるく波うった白銀の長い髪はそのままに、深い蒼の瞳は焚き火の明かりを受けて不思議な色に揺らめいている。
現実離れしたような容貌の持ち主だが、口調そのままにかなりのんびりとした性格がステラと対照的だった。
そしてリーラは武装らしい武装は身に帯びておらず、その傍らに水晶細工の施されている長杖が置かれていた。
「立ち寄った時から、なんか変な雰囲気だとは思ったけどさ」
ぱきん、とまた枝を折る音。
「どこかピリピリしていたというか、殺気が隠しきれていなかったというか……」
「そこまでわかってたなら、なんか言ってくれてもいいのに」
「あらぁ。本気の殺気を感じ取る術はステラの方が得意でしょう? だから、気のせいかと思って」
女二人でこんな夜の森にいるというのに、リーラの口調は呑気なものだった。
ずっと前から変わらない相手の様子にステラは苦笑するしかなかった。
「まあ、さ。確かにあたしも襲われるまで気付かなかったけど」
枝を軽く放りながら、ステラは襲われた状況を思い返す。
炙っていた干し肉を小さくちぎり、口の中に放り込んだ。
「あの村、たぶんまるまるグルだよね」
「おかげでお腹いっぱい食べ損ねてしまいましたねぇ」
「問題はそこかい」
食事の時間の最中に、それまで笑顔で給仕していた宿の人間に突然襲われた。
なんとか応戦するも、相手方には次々と援軍がくる。
その援軍の出方から村中が盗賊の類であるとしか考えられなかった。
出入口である唯一の扉を塞がれそうになった時は、ステラは泣きたい気持ちになったものだ。
その状況はリーラが放った魔術によって回避されたのだが。
もっとも、本人が行使しようと思っていた魔術とはまったく別の術が発動してしまって小首を傾げていた様子を、ステラは見逃していない。
「荷物も路銀も武器とかも無事だったからいいけどさ」
「久し振りのベッドも遠のいてしまいましたねぇ」
「……言うなって。考えると悲しいんだから」
肯定するかのように、遠くで梟の鳴き声が聞こえた。
End.
あとがき
またまたご無沙汰〜な感じのお題バトルです。
最近はなかなかメンツ集まりにくい感じかもです(めそり)
テーマは「食事」、お題は「涙」「乱入」「幻」「いっぱい」
おおよそテーマとはかけ離れたお題が今回並びました(笑)
今回はショート勝負で当初は45分設定、後に60分設定に延びました。
構想はお馴染み書きながら、仕上がるまでに30分ほどです。
珍しく、あっさり書き上がりました。
本当は回想で戦闘シーンを書こうとしたんですが、流れが崩れそうだったので却下。
でも入れたかったなぁ……
剣戟と魔法の描写を最近書いていないので、ちょっと消化不良の感があります。
戦闘シーン入れていたら、きっと時間内に収まっていなかったかもです(汗)
シーンを切り取ったような、との感想をいただけてちょっと嬉しかったです。
掌編なりにこれだけで完結した話である事はもちろんなんですが、過去と発展を感じさせる事が
できたのは収穫かな。
描写の丁寧さは、今後も課題にしたいですね。
もしかしたらステラとリーラは、またどこかで出てくるかもしれません。
もしかしたら、ですが。
タイトルは好きな漫画の表現(単語)から少しアレンジでいただきました。
わかる人いるかなー……
同一お題参加者様
神秋昌史さん
JINROさん
siganeさん(今回の特別ゲスト様)
小説トップ サイトトップ